2009 年 49 巻 5 号 p. 281-284
症例は71歳の男性である.右片麻痺,全失語にて発症し,入院時の頭部CTでは出血性病変や早期虚血変化をみとめなかったが,左中大脳動脈領域に点状の石灰化塞栓を多数みとめた.発症3時間以内であり血栓溶解療法の適応と考えt-PAを経静脈的に投与したが,投与後も明らかな症状の改善はえられなかった.後日撮影した頭部CTでは点状の石灰化塞栓に一致して多発性の梗塞巣の出現をみとめ,頸動脈エコーおよび頸部CT血管撮影では左内頸動脈起始部に潰瘍をともなう石灰化病変をみとめたため,calcified cerebral emboliと診断した.頸動脈の石灰化病変に起因したcalcified cerebral emboliの報告はまれであるが,特徴的な画像所見を呈する病態であり,血栓溶解療法の適応についても検討を要すると考えられる.